【弁護士解説】診断書を公安委員会に提出したら運転免許の効力の停止の聴聞通知書が届いたというときの対処法

第1 なぜ通知書が届いたか

 公安委員会は、交通事故を未然に防ぐべく、安全運転に支障がある者について運転免許の効力を停止する等の行政処分を行います。その運用基準は明確でなければなりませんから、令和7年2月28日付け警察庁交通局運転免許課長通達(警察庁丁運初第73号)として、警察庁のHPに公開されています。https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/menkyo/menkyo070228_73.pdf

 基本的に、1月ほど前に公安委員会に提出した診断書が、この運用基準に引っかかったものとお考えください。

第2 通知書に書いてある聴聞のときに意見を言えば阻止できるか

 聴聞通知書には「あなたは聴聞の期日に出頭して意見を述べ・・・ることができます。」と書いてあり、電話で所管課に問い合わせても「聴聞のときに伺います」と、何かにつけて聴聞、聴聞と言われます。では、言われるがままに聴聞の日に意見を言えばそれだけで阻止できるかというと、とてもできません。行政は、内部で取り決めた基準に従って活動しようとします。いったん上記の運用基準に当てはまってしまうと、よほどの重大な例外的事情がない限り処分を回避できません。

 肝心なのは、運用基準から外れることです。そして運用基準は診断書の記載に着目しているので、診断書の記載内容が変わらなければ阻止できません。

第3 診断書の記載はどうやって確認できるか

 診断書を提出する際にコピーの控えを取っておらず記載内容がわからないということがあると思います。その際は、聴聞通知書に書いてあるとおり「あなたは・・・資料の閲覧を求めることができます」ので、公安委員会の所管課に出向いて診断書(できれば資料すべて)の閲覧を求めます。必ず事前に電話で「これから診断書の内容を閲覧するために出向くので、すぐに閲覧できるようあらかじめ準備しておいてほしい」と告げます。事前に電話連絡をしておかないと、「申込みが本日でも閲覧資料の準備に時間がかかるから後日改めて来てくれ」などと言われます。また、「聴聞のときでも閲覧できますよ」とも言われますが、聴聞のときでは遅すぎます。耳を貸してはいけません。

 閲覧に出向く際は、診断書の記載内容をすべて書き取るために、メモ用紙またはノートパソコンを持参します。

第4 診断書の内容を確認してからの手順

 診断書の内容を確認したら、上記の運用基準と照らして、なぜ基準に引っかかっているのかを分析します。たとえばアルコール依存症ですと、一見、断酒を継続していなければ必ず基準に引っかかるような作りになっています。

 1 医師への面談

 まず大前提として、医師が虚偽の診断書を作成することは犯罪です(刑法160条)。なので、医師が、たとえば断酒できていないのに「断酒を継続している」などと書き直すことはありません。弁護士の方も、医師に虚偽の診断書を作成するよう働きかけたときにはあとで弁護士会から懲戒処分を食らいますので、そんなことはしません。

 肝心なのは評価です。たとえばアルコール依存症でいうと、国際疾病分類(ICD-10)という基準に該当することが求められていますが、この基準は結構厳しいです(過去1年間に6項目のうち3項目以上充たすか、といった判断がなされます)。広い意味でアルコール依存症には該当しても、慎重に検討すれば、国際疾病分類(ICD-10)には当たっていないということがあり得ます。他の病気についても、運用基準に当てはまるものかを慎重に検討します。

 慎重な検討の結果、基準に当てはまっていないんじゃないかという疑義があれば、医師に面談してその点をお尋ねします。医師の方のご判断次第ですが、こちらの指摘を受けて新たに診断書を作成して頂けるということがあります。また実情として、最近になって診断書の書式が変わったこともあり、医師の方々の中には公安委員会の上記の運用基準をあまりご存じない方もいらっしゃるように感じます。診断書の書式について不親切と感じるところもあります(たとえば国際疾病分類(ICD-10)の基準に「該当しない」という選択肢が設けられていない)。

 2 陳述書と新たな診断書の送付

 医師との面談の結果、診断書を新たに作成して貰えたら、すぐにこちらの言い分を記載した陳述書(補佐人であれば意見書)と診断書を、公安委員会の所管課に送付します。処分の当否についてじっくり検討してもらいたいので、聴聞の日に提出するのでは遅すぎます。

 上手くいけば、数日後に処分取り止めの電話連絡が来ます。聴聞期日も無くなります。

 3 新たな診断書を作成してもらえなかったとき

 まず心構えとしては、停止処分を覚悟しましょう。それでも最後までできることをやりましょう。

 最高裁判所平成11年7月19日判決によると、行政基準に従った処分がなされた場合でも、行政庁が個別に審査(検討)する義務を怠ったときには裁量権の逸脱濫用として違法となります。ご自身のケースについて、診断内容に照らしても、交通事故を引き起こす危険が他の運転者と比較して一概に高いというわけではないと積極的に反論することになります。主張内容を記載した陳述書と、その主張内容を裏付ける証拠書類とを準備してすべて事前に公安委員会に送付しておきます。聴聞手続も出頭して意見を述べて記録に残して貰うべきです。

第5 当初の聴聞期日で間に合うか

 聴聞通知書記載の聴聞の期日(概ね3週間後)までに、以上の活動をすべてこなせるかというと、とてもこなせません。期日について変更申出書を提出すべきです。なお、弁護士が補佐人として活動する際は、たとえば「補佐人弁護士による準備に一定期間を要するため、2週間の延長を求める」などと記載しています。

第6 弁護士にご相談ください

 運用基準の分析も、診断書の記載内容の調整も、主張の要点も、専門的知見が求められます。受任して即座に記録の閲覧に出向くといった迅速さが求められます。当職は、これまでアルコール依存症の事例を含めて複数件、運転免許の効力の停止処分を阻止した実績があります。ぜひ一度ご相談ください。