ハウスメーカーとのトラブルでは、契約書の精査が重要です。

契約書上の不備や違反事由を指摘すれば早期解決に繋がることが多々あります。
本稿では契約書のチェック項目についていくつかご紹介します。

この記事でわかること

住宅ローン特約の注意点/建築条件付き土地の法的性質/がけ条例の説明義務

⑴ 住宅ローンを利用する場合

融資利用の特約の欄が空欄になっていないか?

[法律]宅地建物取引業法により、契約書には「契約の解除に関する事項」と「代金に関する金銭の貸借のあっせんの内容及び当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」として記載することが義務づけられています(同法37条1項)。
※重要事項説明としても要求されます(同法35条1項)

融資承認取得期日までに審査を通さなければいけないことや解除期限について案内はあったか?

[裁判例]仲介業者には住宅ローンの「借入れに必要な手続を原告らに促すなどの助言を与える義務を負っていた」として、仲介業者について契約違反を認めた(東京地方裁判所平成24年11月7日判決)。
∵契約書には仲介業者の業務として、「決済手続等の目的物件の引渡しに係る事務の補助を行う」旨が記載されている。
[実務]実務上も、担当者が案内を怠っていつの間にかこれらの期限を徒過していたという事案が散見されます。

⑵ 建築条件付き土地を購入した場合

図面の添付のない工事請負契約書にとりあえず署名捺印させられていないか?

[ガイドライン※]本来、建築条件付き土地を購入した場合、工事請負契約が成立しなければ土地売買契約も無条件で解除される(又は成立しない)ものです(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」第35条第1項第8号関係)。
 それを、間取りなど建物の内容の定まらないまま工事請負契約書に署名捺印させることで土地売買契約を解除できなくして、後で建築計画の予算オーバー等で解除したくても引き返せないようにする手口があります。過去には国土交通省が監督処分をした例もあります(国土交通省中部地方整備局が平成28年3月23日に処分した事例など)
※国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」のこと

土地の代金額を変えられていないか?

[法律]宅地建物取引業法により、「代金・・・について、実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示」は禁止されます(宅地建物取引業法32条)。土地について広告に掲載されていた代金額よりも、売買契約書記載の代金額を(「総額が変わらないから」と言って)つり上げてその分工事請負代金を減らすといった操作をする事案があり、そういった事案には同法32条違反を指摘することが考えられます。

⑶ がけに隣接した土地を購入した場合

擁壁の築造、修繕や土留め施設が必要となり多額の費用がかかることについて具体的に説明したか?がけ条例に抵触する「可能性がある」との指摘に留めていないか?

[裁判例]「売買契約当時、本件建物は都崖条例6条に違反していて、その違反状態を解消するためには防護壁や建物1階部分の補強が必要であった。…これは本件建物に係る法令制限違反の問題であるところ、・・・(売主の担当者)は、・・・原告に対し、そのことを明確に説明することをしなかったし、(仲介業者の担当者)も、・・・独自に説明することをしなかった」(東京地判平成28年11月18日)。
[裁判例]「単に存在する法的規制の種類、名称等を告げるのみでなく、本件土地に課せられた法的規制の具体的内容の説明を通じて、原告らの希望に沿う建物が建築できないことをも説明することが含まれるというべきである。」(東京地判平成21年4月13日)
[実務]工事請負契約を締結した後に、建築確認申請の段階になって自治体の建築審査課から指摘を受けることではじめて擁壁の修繕等が必要であることが発覚し、その費用について上乗せして請求されることがあります。しかし、建築審査課が指摘する内容というのは、水抜き穴が無い、二段擁壁や増積み擁壁である、擁壁に亀裂があるといった外観上明らかな不適格擁壁だったりします。それなら宅地取引や建築工事の専門家であれば、契約時に具体的に説明すべきだったとして、後出しの工事費用相当額について説明義務違反を理由に賠償請求することが考えられます。